イギリスの銀行口座事情




イギリスでは現地給与振り込みをはじめとして、 何をするにも銀行口座が必要になりますが、 その口座を開設するのがたいへんであることは周知の事実です。 店舗に行って英語で延々とやりとりしないといけないのもさることながら、 必要な書類もたくさんあり、 書類が不足していると何度も店舗に足を運ばないといけないかもしれません。 でも、どれだけ苦労しても口座を開設する価値があります。


銀行口座の必要性

日本のクレジットカードでも短期滞在であればそれなりに生活できますが、 長期滞在となるとそれでは対応できないケースがどうしても存在します。
例えば、日本のクレジットカードを使うと 1.6%ほどの海外決済手数料が発生します。 イギリスのデビットカードかクレジットカードでは 当然ながらそのような手数料は発生しません。
もっとも、 毎回1.6%払っても日本のクレジットカードのポイントを貯めたい という人もいるかも知れません。 マイルのように1.6%以上の価値があると考えればそれもまた一つの考え方 ではあります。
ところが、 クレジットカード決済だと2.5%から5%ほどの決済手数料を請求されること があります。 特に、高額な教育費の支払いで合計4%以上の手数料はさすがに厳しい。
よって、 そういったケースでは銀行送金かデビットカード決済にせざるを得ません。
しかし、 デビットカードを作るためには当然のことながら銀行口座が必要になりますし、 銀行送金も窓口に現金を持ち込むのでない限りはオンライン送金の ためにやはり銀行口座が必要になります。
もちろん、現金を持ち歩いて、 あらゆる支払いを現金で行うということも考えられなくはありませんが、 多くの現金を持ち歩くのもまた精神衛生上よくありません。

銀行口座がないとできないこと

上述の理由に加えて、 そもそも銀行口座がないとできないことは結構あります。

など

さらに、これらは店頭や窓口でもできるので必須とまでは言いませんが、 銀行口座があると非常に便利です。

銀行関連の手数料も有利

イギリスの銀行では、 日本の銀行だと手数料がかかっていたものがかからなくなります。

日本でも必ずしもすべて有料と言うわけではありませんが、 時間制限、曜日制限や回数制限など、 制限が多くて非常に使いにくいですよね。 それがすべて無料というのはやはりイギリスが金融大国だからでしょうけど、 逆に、日本がおかしいという言い方もできます。 でもなぜだかマスコミは指摘しない。 銀行が広告主だからでしょうけどね。 非常に不健全だと思います。


銀行選び

日本人はだいたい4大銀行のどれかに口座を開設するのが一般的です。 日本の都市銀行みたいなものだと思いますが、 それよりも遥かにスケールが大きいものです。



では、どうやって銀行を選ぶか。

まず、銀行によって外国人の扱いに差があるようです。 私はLloyds、HSBC、Barclaysに口座開設の経験がありますが、 私の経験ではLloydsは一番問題が少ないです。 必須と思われていた書類が日本人だと必須ではないこともあります。 そういったことをポイントとして銀行を選ぶということもあると思います。

一方、イギリス以外でもその銀行が使えるかどうか、 ということが重要なポイントだと思う人もいると思います。
例えば、ヨーロッパの他国で使う、アメリカで使う、アジアで使う、 といったことです。この場合、海外ネットワークがどうか、 つまり、リテール支店がどこにあるのか、が重要になってきます。
日本の銀行は海外に拠点があってもリテールはやっていないケースがほとんどでしょう。 しかし、イギリスの4大銀行はグローバル展開しているので、 海外にもリテールネットワークを持っています。 そこが日本の銀行とは大きく違うところではないでしょうか。

もっとも、会社の指定で選択肢が無いケースもあります。 その場合はもちろんその銀行を選択せざるを得ませんが、 小切手やコンタクトレスデビットカードなどの使い勝手を考えて もう一つ別の銀行で口座を開設することは十分考えられます。


口座開設に必要な手続き

書類

まず第一に、必須書類を揃える必要があります。 パスポートやBRPカードのような身分証明書はもちろんですが、 現住所を証明する書類を用意する必要があります。

イギリスでは住民票などという概念がないので、 公的証明書を気軽に取得するということができません。 だから個人でこの書類を用意するのはなかなかたいへんなのです。 これが口座開設のハードルを上げている大きな理由の一つです。
雇用者であれば会社に住所の証明書を出してもらうのが一般的ですが、 学生の場合は在籍学校に証明書を出してもらうようです。
しかしながら、専業主婦のように 会社にも学校にも所属しない人の住所証明ではそのような証明書に頼るの も難しく、検索で良く出てくるのは公共料金の請求先氏名を夫婦両方併記 にするという方法ですが、それもなかなか面倒なことです。

私の経験ではイギリスの運転免許証を現住所証明に使うことが一番簡単です。 運転免許証には住所が記載されますから、住所の証明に使えます。 とにかく日本の運転免許証を持っていれば、 手数料を払うとイギリスの運転免許証に切替えることができますから入手も簡単です。

また、最近では日本のマイナンバーも要求されることがありますので、 通知カードなどを忘れずに持っていく必要があります。

そのほか、開設する口座の種別によっては 年収の証明などが必要になるかも知れません。

開設手続き

次に必要なのは口座開設を依頼して店舗に行くことです。
開設するのがイギリス国内口座の場合、 オンラインで口座開設を依頼するのが簡単です。 例えば、Lloydsではオンラインで個人情報を入力し、 開設希望支店を選ぶと、 14日以内にその店舗に行って書類を提出するように指示されますので、 用意した書類を持って店舗まで出向きます。

一方、開設するのがオフショア口座の場合は、 開設手続きができる支店が限られているので、 事前にアポイントメントをとって店舗に行くことになります。 私はオフショア口座を開設したときはシティの店舗まで出向きました。
その場合、店舗では英語でのやり取りが1時間以上続きます。


口座の種類

日本の銀行にも普通、当座、定期預金など複数の口座がありますが、 決済用途であっても普通預金口座を使うのが一般的です。 しかし、イギリスの銀行では決済用途は 当座預金口座(Current Account)を使う方が一般的です。
さらに、当座預金口座にも種類があり、 口座使用用途以外に年収、雇用形態などの信用情報や、 ビザステータスなどの いろいろな属性で開設できる口座が変わります。
例えば、会社員や無職の人、学生でも違いますし、 イギリス人とTier 2 ICTビザの日本人でもいろいろ違ってきます。

海外赴任者向け口座

Tier 2 ICTビザを持つ海外赴任者はイギリスの税法上の居住者かつ 国外勤務日数控除 (Overseas Workday Relief - OWR) の対象となっているケースが多いと思います。 その場合は確定申告で控除分の所得税の還付を受けるために、 税制適格口座(Qualifying Account)として イギリス国外にあるオフショア口座と呼ばれる口座を開設する必要がある 場合があります。

もちろん、海外赴任者であっても こういった税控除を受けない場合は通常のイギリス国内口座でな んら問題有りません。

オフショア口座の開設にあたっては、 年収や投資額に一定の基準があり、また使用目的も厳しく審査されますので 誰でも開設できるわけではありませんが、 海外赴任者だと会社のサポートにより開設できる可能性が高いと思います。

なお、オフショア口座を税制適格口座として使用するときに以下の点に注意します。

オフショア口座のメリット

給与振り込みはもちろんのこと、 日本からの送金でもイギリス国内への資本の持ち込みとは見なされない、 ということがあります。 そしてこれは、OWR対象者が税制上の優遇を受けるためにも必要なことで す。

また、開設場所がタックスヘイブンと言うだけあって 利子などには課税されませんし、 こういった口座ではその性格から イギリス国内外への送金が頻繁に行われますが、 送金手数料も無料です。
さらに、将来世界中のどこに引っ越してもオンラインで使え、 世界中のATMで現金引き出し可能ですので、 非常に使い勝手のいい口座です。

Peel Bay Beach
Peel town, Isle of Man from WikiPedia

実際のオフショア口座

Lloyds Premier International Account



Lloydsのオフショア口座はInternational Accountと呼ばれます。 そして、その中でも Premier International Account は口座維持料や海外送金手数料などが無料であり、 特に使い勝手がいい口座です。 ただし、この口座の開設にあたっては 通常は年収100,000ポンド以上が要求されます。 しかし、最初のデポジットは要求されないので、 税制適格口座に使用しやすいと思います。

さらに、この口座には付随サービスとして、 航空機遅延補償などまでカバーされるAXAの手厚い海外旅行保険 Worldwide Travel Insurance (Benefit Sumarry) が無料で付帯しています。 LloydsのPlatinum Accountにも同様の保険が付帯されていますが、 月額口座維持料が17ポンドもかかりますので、 この口座はそういう点でもお得感があります。 この口座があれば、 もはや航空機遅延補償のために高額な年会費が必要なクレジットカードに 入会する必要はないと思います。

ちなみに、他の銀行のオフショア口座はどうなっているかというと、 HSBC Expat Account では最低60,000ポンドのデポジット、 Barclays International Accountでは最低口座残高25,000ポンドなど、 やはりハードルは高いです。 また、最初から最低口座残高が設定されているので 税制適格口座にもしにくいかもしれません。

専業主婦向け口座

Classic Current Accountと呼ばれる口座維持費無料でデビットカードが 使える当座預金口座が使い勝手がいいと思います。
なお、収入がないと口座開設を断られることがあるようですが、 収入がなくても日本の銀行預金を持ってくるとでも言えばいいと思います。
ちなみに、Lloydsでは日本人であればパスポートとBRPカードだけで 口座を開設できるようです。

子供向け口座

銀行によって対象の最小年齢が違っていますが、 早いところでは7歳くらいからChildren's Accountという口座を開設できます。
早くもデビットカードやインターネットバンキングが利用できたりして、 非常に便利です。
また、少額であれば金利が優遇されているので、 日本の銀行に預けるより遥かに得です。

口座開設にあたってはオンラインで申し込んだ後、 必ず保護者とともに店舗に出向く必要があります。
また、保護者がその銀行に口座を開設していれば 住所の証明は特に必要ないようです。


送金に関する事項は 日本からの送金 に移動しました。


参考